シンポジウム「新時代を生き抜くための「グローバルリテラシー」」が開催されました



UPDATE 2022-07-25

2022年6月18日(土)、国際学部開設を記念して、シンポジウム「新時代を生き抜くための「グローバルリテラシー」」が開催されました。国際学部は、グローバル化する世界の中で、困難な課題を乗り越えていくための新たな「グローバルリテラシー」をもつ知的専門職業人の養成に取り組んでいます。今回のシンポジウムでは、そのモデルに相応しい二人の講師をお招きしました。

早稲田大学国際学術院国際教養学部教授の陳天璽(ちん・てんじ)氏には、「無国籍者から国際社会を問う」というタイトルで講演いただきました。陳天璽氏は「無国籍ネットワーク」代表理事として、実践的な活動も行っています。講演の冒頭ではまず、無国籍のイメージや国籍の概念について解説がありました。その上で、現代社会において、出生地主義や血統主義で国籍が与えられる各国の制度の結果や、移民や難民の状況などにより、無国籍者が生まれうる多様な状況を説明されました。そして、ご自身の経験やこれまでの活動を通して関わってきた国籍がないことで生じる様々な問題について紹介されました。さらに、小さな諸島で国籍に関係なく生きる人々についても示されました。これらの話を踏まえて、現在の国籍が過度に重視される社会に対して問題を提起されました。グローバル化する世界において、国籍の問題は必ず生じることであり、我々はそれを理解する必要があります。そのために教授が取り組んでおられる活動についても紹介され、特に最近の活動として「無国籍」という問題について子供たちに知ってもらうための絵本を作成した経緯についてもお話しされました。国民国家の限界があらわになり、グローバル化がますます進む中で、「無国籍」を特殊な一部の問題でなく、我々が生きる社会の一部としてとらえ、どのように良き社会を作るのか。講演を通して、強いメッセージが伝わってきました。

特別非営利活動法人パルシック理事の伊藤淳子(いとうじゅんこ)氏には、「モノが繋ぐ世界~「琥珀色の向こう側」に20年~」というタイトルで、東ティモールでの活動の背景やフェアトレードの具体的な取り組みについて、ご講演いただきました。東ティモールの主要な作物はコーヒーです。コーヒーに関わる問題は、世界のコーヒー消費国の上位に入る日本にも繋がる問題でもあります。「日本で飲む1杯のコーヒー代金のうち、たったの0.4%しか現地のコーヒー農家の収入にならない」という話は、かなりインパクトのある内容でした。そうした中で、生産する途上国と消費する先進国と間の持続可能な取り組みとして注目されるのが、フェアトレードです。伊藤氏は、20年間のパルシックの活動を通して、コーヒー生産者の協同組合を作ったことや、得たプレミアム(奨励金)により上水道の整備などを行った活動を紹介されました。しかしながら、20年の取り組みを通して、まだまだ消費国優位の状況は変わらず、コーヒー農園だけの収入では生活が困難なために若者が流出する問題があるなど、現状でも多くの課題があります。こうした中で、「生産者に変化を求め続けるだけでいいのか」という問いが投げかけられました。講演を通して、日常において飲むコーヒーは世界とつながっていることを実感し、最終的にモノを消費する立場にいる我々に何ができるのかを考えることにも繋がりました。

 二人の講演を受けて、ディスカッサントである本学部の田中悟准教授は、「グローバルリテラシー」を考えるうえで重要なこととして、自分たちの知っている世界の向こう側を想像することや、さらに、グローバルな世界で生きぬくためには知らないものとの間に立ちはだかる「壁」をどのように穴をあけるかということをあげました。今回の2つの講演は、何を手がかりとして「向こう側」に思いをはせ、どのように「壁」に立ち向かっていくのかを知るためのケーススタディだったといえます。その後、田中准教授や参加者からの質問があり、それに対して、講演者の二人には、さらなる現在の問題、我々にできること、そして、未来への可能性など多くの視座を提示していただきました。グローバル化し、世界がますます繋がる現代社会において、我々がどのようにお互いを信頼しあいながら新しい世界を作るのか、お二方のご講演を通じて、そのために必要な「グローバルリテラシー」を考えるうえで重要な手がかりとなるヒントが示された、本学部にとっても意義深い内容のシンポジウムとなりました。

(国際学部准教授 加来奈奈)