森ゼミナールでは2023年12月5日(火)3限に立命館大学経営学部特別任用教授の鄭雅英先生をお迎えし、ゲスト講義を開催しました。当日は鄭先生に摂南大学寝屋川キャンパス7号館の教室へお越しいただきました。鄭先生は在日コリアンであり、海外コリアン事情について詳しい方です。鄭先生は現在、立命館大学経営学部で「朝鮮語」「東アジアと朝鮮半島」「平和人権フィールドスタディ」といった科目などを教えていらっしゃいます。
鄭先生によると、現在日本には81万人の在日コリアンがおり、また中国には230万人、アメリカには260万人もの海外在住のコリアンがいるそうです。
最も興味深かったのは、様々国に国境を越えた人的ネットワークがあるという話です。海外に住む人々は、家族がそれぞれ分かれて生活しているという例も少なくありません。しかし現代ではスマホなど通信媒体が充実しているため、別々で生活していても家族と意思疎通ができます。このような人たちは、トランスナショナル(transnational)な移動と社会の一歩先を歩んでいるとのことです。
海外コリアンは、中国、ロシア、アメリカなどさまざまな国・地域で生活しています。過去の戦争などの影響で帰還を許されずそのまま住み続けた人たちも多くいると聞きました。加えて、韓国では就職難などが続き、海外へ移住してそこで就職して暮らす選択肢をとる人々もいるそうです。
また、中国では、韓国ドラマ「星から来たあなた」の大ヒットをきっかけに、韓国のインスタントラーメンの代表である「辛ラーメン」の売り切れが続出したそうです。若い人たちでも韓国ファッションを真似したり、文化を好きになる気持ちに国境は関係ないのだとおっしゃったことが心に残りました。
鄭先生のお話に対して、こうした海外コリアンの人々の中で故郷(故地)に戻った人はいるのかと質問したところ、中国では170万人のうち70万人が韓国へ戻ったとのことでした。また、アメリカでは朝鮮戦争による孤児が養子として在住していましたが、その方たちも親族を求めて大半が韓国へ戻ったそうです。
以前より韓国ではジェンダー問題が強く意識されています。また競争社会のため、明るい未来を求め日本やアメリカ、オーストラリアなどで就職する方々もいるそうです。一見明るいように見える中で、こうした裏側で起こっている現実をよく見つめなくてはならないと考えさせられました。加えて、鄭先生は「韓国で起こっていることは、明日の日本」と仰っていました。今起こっている問題から目を背けるのではなく、自分たち一人一人が意識的に考え行動していかなくてはならないのだと思いました。
今回のゲスト講義を通して、海外コリアンと韓国の現状について、より深いところまで知ることができました。とても貴重な時間になりました。これを機会に、韓国の歴史や文化の理解を深め、今後の研究へと繋げていきたいと思います。お忙しい中、足をお運びいただいた鄭雅英先生、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
(摂南大学外国語学部/国際学部 森ゼミナール 池上愛利)