韓国の映画専門誌出版社シネ21(씨네21)を訪問しました



UPDATE 2024-04-25

私たち外国語学部(国際学部)森ゼミナールは、2024年2月13日(火)に韓国ソウル市に位置する映画専門誌出版社シネ21社(韓国ソウル特別市永登浦区)を訪問しました。シネ21社は、批評のクオリティーが高いことで有名な映画評論雑誌『シネ21』を発行していています(web版はhttp://www.cine21.com/)。『シネ21』は映画専門誌ではありますが、映画評論だけでなく、ドラマやアニメーションへの特集や、俳優や脚本家へのインタビュー記事など様々な内容が掲載されています。訪問当日は、『シネ21』編集長のソン・ギョンウォン(송경원)さんにお話を伺いました。

ソン・ギョンウォン編集長は映画評論家としてデビュー後にシネ21社に入社し、映画批評専門記者となりました。事前に私たちからお送りした質問に、ソン編集長は準備してくださり、一つ一つ丁寧に答えてくださいました。

まず、私たちはK-POPとドラマ・映画の関連性について質問をしました。ソン編集長によると、昔はK-POPアイドルが俳優として演技することに対して批判的な意見が多く、評価されないことが多かったようです。しかし、現在はむしろアイドルを起用することによってヒットする作品があったり、K-POPアイドルのMV(ミュージックビデオ)を映画監督が作成したりすることも増えたそうです。最近では、ドラマや映画を視聴できるプラットフォームが多くなったことにより、アイドルや新人俳優が芸能界でブレイクするチャンスも高まりました。以前は、新人が出演する作品はホラー系の作品というのが一種の登竜門だったようですが、今はwebドラマへの起用もあるということでした。このような時代の変化によってK-POPアイドルに求められることが多くなったのも事実で、K-POPアイドルはただ歌って踊れるアイドル業だけでなく、俳優業やタレント力、更にプロデュース力までもが求められるようになったことも分かりました。これまではデビュー後に経験を積み重ねて得た能力が、今ではデビューの時点で求められているということを聞き、韓国の芸能界の厳しさを実感しました。

また、ソン編集長のお話から、ドラマや映画で人気アイドルを使ったからといって必ずヒットするわけではないことも知りました。韓国の視聴者は冷静にドラマや映画を観てSNS上で評価をするため、人気アイドルでも演技が下手では批判されてしまいます。そのため、アイドル業と俳優業を上手く使い分ける人が今の韓国芸能界に求められる人材だと仰っていました。

最後に、ソン編集長は現在のK-POP業界は「韓国のK-POP」ではなく、「世界のK-POP」を作ろうとしているとおっしゃいました。最近のK-POPアイドルでは、韓国人だけのグループは少なく、多国籍のメンバーを取り入れるなどグローバルな業界になっています。ソン編集長はK-POPの「K」は韓国ではなく、今や世界を指しているのではないかと指摘し、私(益田)はその意見に大きく共感しました。最近のK-POP音楽業界の方向性は、社会問題を取り上げるようになっており、ただ面白いだけではなく、意味のあるものを作り上げるようになったそうです。これはK-POPを始めとした音楽業界だけでなく、映画やドラマにも言えることで、社会的メッセージが込められていない作品は受け手(視聴者)に軽く感じられてしまうという傾向にあるそうです。一方で、映画やドラマだけでなくK-POPアイドル自体も数が多く作品がたくさん作られるため、社会的メッセージを込めたよい作品を作ったからといって必ずしもヒットするとは限らないというお話に、韓国芸能業界の現実を改めて認識しました。

今回、シネ21社を訪問して関係者にお会いし、媒体(メディア)の作り手という立場からのお話を伺えたことはとても貴重な経験となりました。ソン編集長は私たちゼミ学生の質問に1時間半ほど熱心に答えてくださるだけでなく、『シネ21』のバックナンバー数冊や特別版冊子などのプレゼントをたくさん用意してくださいました。

お忙しい中、私たちのために時間を作ってくださったソン編集長に心からお礼を申しあげます。ありがとうございました。

摂南大学 外国語学部(国際学部) 森ゼミナール 益田優笑