主たる研究テーマ:ひとの暮らしと変化
私の専門分野は文化人類学です。文化人類学は、一般の人々に関する多様な文化・社会現象を、「長期のフィールドワーク」と「参与観察」というふたつの研究手法を主として用いながら読み解いていく学問分野です。
近年「フィールドワーク」という言葉はフィールド(現場)とワーク(仕事、作業)を組み合わせた言葉ですから、現場での作業(あるいは野良仕事)がもともとの意味になります。いまでは、小学校の授業で商店街の人などにお話しを伺う校外学習的な取り組みを指すときにも使われますし、病院や工場などにおける調査にも用いられる大変ひろがりの言葉となっています。私の場合、フィールドワークは、海外の異なる文化をもつ社会における調査研究を意味しています。私の研究のフィールド(現場)は、主としてインドネシア、特にスマトラ島南部のランプン州です。最近は、ジャンビ州、西スマトラ州などスマトラ島他地域にも対象を広げています。
もうひとつの「参与観察」は、ひとびとの生活の場に滞在し、実際に行われている様子を見聞しながら記録し、学術的に興味を持った点や、よく理解できない点は現地の人々にインタビュー(や雑談)を行うなど、時間も手間もかかり、気長に取り組まねばならない調査手法を指します。他方で、より現場の実践に則していて一般には記録されない多様な事例を扱うことでより深く分析出来ることにより、それまで知られていなかったこと、あるいは当たり前だと見過ごされていたことに気付き、新たな学術的な知を世にもたらすことができる調査手法でもあります。
複雑化する現代社会を見るために「フィールドワーク」と「参与観察」は、文化人類学の現場とは異なる現場にも形を変えながら応用され、いまはビジネス・アイデア創発の場においても重要な意味を持っています。
いま私が関心を持っているのは、(1)インドネシアにおける暮らしの変化、そして(2)インドネシア人の移動動態、(3)その他です。
(1)としては、インドネシアの暮らしにおいて新たに導入された「みずまわり」の話、生活用品の変化の話などを挙げることが出来ます。
(2)としては、インドネシア国内の国内移民動態や、インドネシア人の訪日観光・国内観光動態を挙げることが出来ます。
(3)は学外の多様な研究者との共同研究による諸テーマです。
(1)から(3)については下記のようにいくつか共著/単著を出版していますので、関心があれば手に取ってみてください。
共著・単著一覧
- 国立歴史民俗博物館/花王株式会社(編)、2022年、『〈洗う〉文化史: 「きれい」とは何か』、吉川弘文館(担当範囲:「第6章 インドネシアにおいて「洗う」ということ」)
https://setsunan-kokusai.jp/w/2022/04/26/金子先生の新刊がでました/ - 山口裕子、金子正徳、津田浩司(共編著)、2017年、『「国家英雄」が映すインドネシア』、木犀社(担当範囲:「序・英雄大国インドネシア」、「第3章民族のしがらみを超えて―ランプン州における地域称号制度と地域社会の課題―」)
- 鏡味治也(編著)、2012年、『民族大国インドネシア―文化継承とアイデンティティ』、木犀社(担当範囲:「コラージュとしての地域文化―ランプン州に見る民族から地域への意識変化」)
- 月刊みんぱく編集部(編)、2012年、『食べられる生きものたち:世界の民族と食文化48』、丸善出版(担当範囲:「世界を動かした熱帯の植物」)
- 金子正徳、2011年、『インドネシアの学校と多文化社会―教育現場をフィールドワーク』、風響社