UPDATE 2023-05-16
2023年5月10日(水)の3時間目に看護学部の学生が国際学部の授業に参加し、国際学部の学生とともに多文化共生について学び、お互いに意見交換をしました。
今回の看護学部と国際学部の連携による学生の授業参加は、初めての試みで、看護学部の田中結華教授の「多様な文化的背景を持つ在日外国人患者への看護の探求」をテーマにする授業の一環として企画されました。4年生2名が、国際学部の門脇薫教授の「国際社会と日本語プロジェクト」(受講者49名)の授業に参加し、「多文化共生と日本語教育:やさしい日本語」についての講義を受け、一緒にディスカッション等のグループワークに参加しました。
今後日本社会では、ますます外国籍の住民が増加することが予想されるため、日本語母語話者の日本人側が「やさしい日本語」を学んでコミュニケーションをとっていく必要があることを、今回の授業をとおして学びました。
この後は、各学部の授業において看護学部の学生は、「在住外国人への医療サポートに役立つパンフレット」を作成し、国際学部の学生も「在住外国人に役に立つものを作成する」というプロジェクトワークを行います。学期の最後には、お互いの成果物を共有する予定です。
今回の学部の垣根を超えた授業での交流は、両学部の学生にとって非常に貴重な学びの機会となりました。このような取り組みが行えるのが、総合大学ならではの強みであり魅力だと言えます。
(文責:国際学部教授門脇薫)
UPDATE 2023-04-14
2023年2月15日(水)、私たち外国語学部森ゼミナールは、韓国のソウル市銅雀区にある崇実[スンシル]大学を訪問し、学生交流を行いました。崇実大学国際処(本学のグローバル教育センターに該当)職員の方々と国際広報大使(Soongsil International Ambassador、SIA。崇実大学学生による大学広報組織)のメンバーが歓迎してくれました。SIAは世界中から崇実大学を訪れる来賓や大学関係者・留学生にキャンパスを案内し、学生同士の交流を手助けする役割を担っているという説明を受けました。SIAのメンバーは非常に流暢な英語や日本語を話すことができ、同じ学生ながらその語学力に大変驚きました。また、崇実大学学生であることに誇りを持っていることにも好感を持ちました。
崇実大学とは
崇実大学は、1906年に大学部を設置した歴史ある大学であり、韓国で最初に大学認可を得た大学です。キリスト教系の大学のためキリスト教の教理を踏まえた教育を基本としており、多様なカリキュラムが設けられています。IT分野の最先端の教育を実施していることに定評があり、IT学部を設置しています。近未来的な建物も目立ち、韓国内で時代の最先端を行く大学の一つと言えるでしょう。留学生も多く、グローバルな大学としても有名です。本学と崇実大学は2019年に交流協定(学術交流に関する覚書・学生交換協定書)を締結しています。
キャンパスツアー
訪問当日、まず崇実大学のSIAの学生たちがキャンパスツアーをしてくれました。キャンパスツアーでは、米国長老派教会の宣教師であり学校創設者であるウィリアム・ベアードの銅像や、広大なサッカーコート、それぞれの建物の特徴などを一つずつ丁寧に紹介してくれました。崇実大学はサッカーの強豪校として有名で、多くのプロサッカー選手も輩出しており、サッカーコートの大きさは実際に国家代表選手が使用する公式サッカーコートと同じ規格に基づいて作られているとのことです。キャンパスツアーの最後には、キャンパス内にある韓国キリスト教博物館を見学しました。大学付属の博物館とは思えないほどとても立派な建物で貴重な展示品も多く、崇実大学の歴史・韓国のキリスト教史・韓国近現代史を時系列で学べるようになっていました。ここでもSIAメンバーが英語と日本語で解説してくれました。
【韓国キリスト教博物館を見学している森ゼミナール学生】
【韓国キリスト教博物館で集合写真】
学生交流
キャンパスツアーのあとは、新陽館1階のグローバル情報センター(Global Information Center)ラウンジで学生交流会が行われました。テーブルには沢山の韓国のお菓子と飲み物が用意されていました。私たちゼミ学生は、事前に準備したパワーポイントを用いて自己紹介やゼミでの活動を英語・韓国語でプレンゼンテーションしました。
その後、崇実大学の皆さんからのQ&Aに答えました。質問の内容は、摂南大学の授業の雰囲気や、放課後の過ごし方、履修登録の仕方など主に日韓の大学の違いについての質問が多く、同年代の日本の大学生について関心を抱いてくれているようでした。とても楽しく和気あいあいとした時間を過ごしました。私たちも崇実大学のみなさんに大学生活などについて質問し、韓国の大学の仕組みや文化を知ることができました。また、私たちが「日本文化の中で好きなものはありますか?」と質問したところ「『スパイファミリー』のアーニャが可愛い」「『崖の上のポニョ』とかジブリが好きです」「あいみょんをよく聴きます」などポップカルチャーの好みや、「京都などの歴史ある場所が好き」など関心のある場所を聞かせてくれました。SIAのメンバーが日本によい印象を持っていることが分かりました。私たちゼミ生とSIAの学生たちはお菓子を食べながら学生同士気兼ねなく思いっきり会話を楽しみました。1時間以上は話し続けたと思いますが、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいました。訪問の最後には、パク・ジュヨン国際処長の挨拶や集合写真の撮影をしました。
【学生交流会の様子】
【パク・ジュヨン国際処長(崇実大学経営学部教授、左)と森類臣准教授(本学国際学部、右)】
訪問を終えて
海外の学生との交流は初めてだったため、私たちゼミ生はとても緊張していましたが、国際処職員の方々、SIAの学生たちがとても温かく迎えてくれ緊張がほぐれました。私たちを歓迎するための様々な工夫をしてくれていたことがとても嬉しかったです。実際に韓国で生活している学生との会話は新鮮で、それぞれの文化に触れることでたいへん貴重な交流ができました。これからも崇実大学の学生たちと連絡を取り合っていきたいと思います。
貴重な機会を設けてくださった崇実大学国際処関係者の方々、SIAの皆さんに心から感謝いたします。
ありがとうございました!
【学生同士の集合写真】
(摂南大学 外国語学部 森ゼミナール 梅田葉瑠奈、原口恭)
UPDATE 2023-04-14
2023年2月15日(水)午前10時、私たち外国語学部森ゼミナールのメンバーはハンギョレ新聞社(ソウル市麻浦〔マッポ〕区)を訪問しました。ハンギョレ新聞社では、ハンギョレ経済社会研究院院長兼論説委員のイ・ボンヒョンさんと、編集局国際部長のキル・ユンヒョンさんにお話を伺いました。
はじめに『ハンギョレ新聞』がどのようなマスメディアであるのか簡単に紹介します。1987年6月の民主化宣言後に発刊準備委員会が構成され、翌年5月15日に『ハンギョレ新聞』は全国民を対象に株を公募するという、メディア創設の方式として非常に珍しい「国民株方式」で資本金50億ウォン(当時)を集めて創刊されました。また、「権力や資本(広告主)からの独立」を理念として掲げ、韓国社会における革新系のメディアとして知られており、韓国現代史の重要な一幕を飾る主流メディアだと言えます。ちなみに、「ハンギョレ」とは「一つの民族(同胞)」を指しているそうです。
ハンギョレ新聞社に到着するとイ院長やキル部長を始めとする関係者の方々に出迎えていただきました。社屋2階の経済社会研究院に移動し、自己紹介を済ませた後、イ院長から韓国社会の現在について解説をうかがいました。韓国のマスメディアに勤務している方からうかがう韓国社会の内情は非常にリアリティがあり、大変勉強になりました。映画『パラサイト』などの作品を事例に挙げつつ、韓国社会内部における様々な分断構造についてお話してくださいました。
【ハンギョレ経済社会研究院の会議室で。左端がイ院長、右端がキル部長】
その後、1階のラウンジに移動し、キル部長からも韓国の現状について話を伺いました。キル部長は「韓国は大統領制であり、大統領が交代するたびに激しい変化が起こる」と述べ、「分かりやすく説明すると、5年ごとに『関ヶ原の戦い』が起こっているようなものだ。大統領が変わると社会がガラリと変わる」と説明してくださいました。また、「韓国をよく知ろうと思ったら、韓国現代史という『縦軸』を学ぶことが重要だ」と強調しました。光州事件(光州民衆抗争)に関する映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』や、韓国全土に広がった民主化闘争を描いた映画『1987、ある闘いの真実』など、韓国現代史の中でも特にキーポイントである出来事を素材に作られた映画を勧めていただきました。
質疑応答では、メディアだけでなく日韓関係に関する質問もゼミ生より挙がりました。それに対しキル部長は「日韓が理解し合うには、まずお互いを否定せずに受け入れて考えることも重要だ」と答えてくださいました。
【私たちゼミ学生の質問に答えてくれるキル部長】
その後、キル部長にハンギョレ新聞社内を案内して頂きました。編集局や資料室はもちろん、映画専門雑誌『シネ21』の撮影スタジオと屋上庭園、ハンギョレ新聞社が運営している放送局「ハンギョレTV」のスタジオを見学しました。リアルタイムで働いている人の様子や新聞社内部の雰囲気など、普通では見られない貴重な体験をさせていただきました。最後に、玄関ロビーに飾られている「特ダネ」記事を見ました。そのうちの一つはキル部長が書いたそうです。
【編集局を見学】
ハンギョレ新聞社を訪問したのは2時間ほどでしたが、日本の大学生である私たちが韓国の主流メディアに勤めている第一線の方のお話を直接聞くことができたのはとても良い経験となりました。今回学んだことを、今後の調査・研究活動に活かしていきたいと思います。貴重な時間を割いて面会してくださったイ院長・キル部長、そして温かく出迎えてくださったハンギョレ新聞社の方々に心からお礼を申し上げます。
【ハンギョレ新聞社玄関前でキル部長と一緒に記念撮影】
(摂南大学 外国語学部 森ゼミナール 神谷亜伶・大島知輝)
UPDATE 2023-04-07
読売新聞の「ニッポン暮らし:ボイス」というコーナーで、本学の外国人留学生張晋豪(ちょう しんごう)さんが投稿した「お手ふきを母国でも」という記事が3月12日(日)朝刊に掲載されました。この文章は、全学の外国人留学生を対象にした「日本事情」科目の授業での取り組みの一環で作成したものです。
「日本事情」の授業では、教員が「日本は~だ」というように講義形式で知識を一方的に伝授するというやり方ではなく、日本の映画やドラマの一部の場面を視聴し、それについて受講生でディスカッションをしながら日本や受講生の国についてお互い学び合うことを目的にしています。「日本でびっくりしたこと」をテーマにした授業では、日本語教員養成課程で学ぶ外国語学部の4年生10名に「日本事情」の授業に参加してもらい、留学生と共にテーマについてディスカッションをするグループワークを行いました。その後、留学生は各自で日本語で文章を書き、それについてプレゼンテーションをし、最後に文章にまとめ、授業担当教員(筆者)が添削し、推敲し、最後に読売新聞に全員が投稿しました。今回張さんの書いた文章がめでたく掲載されました。学習している言語で書いた文章が、その言語が使われている国の新聞に掲載されるということは、素晴らしいことだと思います。張さんだけではなく、外国語を学ぶ本学の学生皆さんにとっても今後の学習の励みになると思います。
(門脇 薫 教授)
<参考:2023年3月12日読売新聞 一部抜粋>
お手ふきを母語でも
中国の高校を卒業し、18歳で来日してから約2年がたちました。日本での暮らしに徐々に慣れてきましたが、母国の文化との違いに気付くことがあります。
飲食店やカフェで席に着くと無料のタオル(お手ふき)を店員さんが持ってきてくれることはその一つです。中国では、こうしたサービスは一般的ではありません。暑い時期は、冷たいお手ふきを使うとひんやりして、疲れが吹き飛びます。寒い季節だと、温かいお手ふきで気持ちがよくなります。お手ふきがお客さんの満足度を高めていると思います。
私は現在、大学で経営学を学んでいます。日本の良い文化や伝統を発見し、将来に生かしたいと思います。将来、中国で飲食店を経営することがあれば、お手ふきを提供してみたいです。
これからも日本で暮らす中で、母国との違いを実感することがあると思います。その際は、違いを受け入れ、学んでいきたいです。
*掲載にあたり許可を得ております。
UPDATE 2023-04-04
2023年2月14日(火)に、私たち外国語学部森ゼミナールは、韓国のソウル市麻浦〔マッポ〕区に位置するテレビ放送局JTBCを訪問しました。記者との面会、スタジオ見学をさせてもらいました。
JTBCとは
JTBCは中央日報系列のテレビ放送局です。総合編成チャンネルですが、限られた視聴者にではなく一般向けに広く放送しています。JTBCという社名は「中央東洋放送(Joongang Tongyang Broadcasting Company)」の略であり、その前身は、1964年から1980年に存在していた東洋放送(TBS)です。2011年12月1日に開局し、KBSやMBCなどの地上波と同様にニュースからドラマ、バラエティ、教養プログラムまで様々な番組を製作しています。JTBCで放送している代表的なバラエティ番組として『知ってるお兄さん(아는 형님)』『ヒョリの民宿(효리네 민박)』などがあり、ドラマとしては『梨泰院クラス(이태원 클라쓰)』などが挙げられます。有名な番組ですので、知っている人も少なくないと思います。
シン・アラム記者へのインタビュー
私たちは、JTBC側の配慮で、2013年からJTBCで記者として働いているシン・アラム記者(調査報道チーム)の話を聞くことができました。シン記者と面会できたのは20分程度の短い時間でしたが、私たちゼミメンバーの質問に丁寧に答えてくれました。
シン記者が言うには、韓国でも日本と同様に若者の「テレビ離れ」が進んでおり、その対策としてJTBCは常に新しいことに挑戦しているとのことでした。例えば、若者がよく見るようなティックトック(TikTok)やユーチューブ(YouTube)を使ったライブ放送など、視聴者とコミュニケーションが取れる通路と機会を多数作ることで、若者の興味を惹きつける努力をしているとのことでした。また、ウェブとテレビ放送のコンテンツを合わせて、相乗効果が出るような工夫もしているようです。バラエティ番組やニュースなどさまざまなことを放送している中で、最近JTBCが特に力を入れているものは、ドラマやNetflixへのコンテンツ提供、芸能プログラムであり、このことからも時代の流れを掴み流行に沿って放送コンテンツを制作しているということがわかりました。
ゼミの指導教員である森准教授が「韓国では、ニュースサイトを含めて様々な報道機関が調査報道(Investigative journalism)を実践し成果を出してきた。そのような状況の中で、JTBCはどのようなことに力点を置いて調査報道をしているのか」と質問したところ、シン記者は「日常的な話題や現象を深く掘り、そこにどのような問題があるのかを追及するようにしている」と答え、最近取材しているテーマを交えながら分かりやすく説明してくれました。
シン記者の話を聞きながら、JTBCの社員たちは、人々に寄り添うことを大切にし、視聴者のニーズや時代の変化に合わせて挑戦し続けている放送局だという印象を受けました。
【シン記者を囲んで記念撮影】
スタジオ見学
シン記者との面会の後、コミュニケーションチーム職員のキム・ガンウンさんがJTBC内を案内してくれました。初めに見学したのは、報道番組を編集する「サブ」(副調整室)でした。大きなモニターや画面が多数あり、番組撮影の様子を見ながら時間調整や編集をしているそうです。
【ニュース編集のためのサブ(副調整室)】
【副調整室を見学するゼミメンバー】
その後、ニュース番組の制作スタジオに案内してもらいました。ここには、ニュース番組の出演者が座る椅子や机などのセットがあり、臨場感があふれていました。また、テレプロンターや、移動型の大型撮影カメラなどがあり、撮影の裏側を知ることができました。
【JTBCのニュース番組『事件班長(사건반장)』のセットに座らせてもらいました】
最後に見学したのは吹き抜けの3階建てのエリアで、2階と3階にはデスクがあり、スタッフが作業をしている様子を伺えました。1階には、ニュースを始めとしたさまざまな番組を撮影できる大きなスタジオがあります。どのような設備で撮影しているのかじっくり学ぶことができました。番組制作の裏側を見ることができたのは初めてで、貴重な機会となりました。
【とても広いスタジオでした】
今回のJTBC訪問を通して、なかなか会うことが難しい方に話を聞くことはもちろん、実際の制作スタジオなど普通は入ることができない場所も見学することができ、とても貴重な経験をすることが出来ました。JTBC見学を通して、韓国のテレビ番組制作についてより深く理解することが出来ました。今回の経験を、私たちゼミの共同研究に充分に活かしていきたいと思います。訪問を歓迎してくださったJTBC関係者の皆様に、この場を借りて心よりお礼を申しあげます。
【いただいた記念品を手に、JTBCの玄関で記念撮影】
(摂南大学 外国語学部 森ゼミナール アダムス小百合・黄愛美)
UPDATE 2023-03-27
国際学部が取り組んでいる国際協働オンライン学習プログラム(Collaborative Online International Learning:COIL)活動の一環で、2022年度後期(COIL活動期間は10月上旬から12月中旬の9週間)に、外国語学部(現国際学部)の3年生6名と4年生7名がアメリカ合衆国メリーランド州のHoward Community College(William Lowe先生のクラス9名)と協働学習をしました。テーマは、Short Stories(短編物語)で、Padletという教育用ICTツールを用い、非同期型で交流をしました。
最初の2週間は、お互いのことを知るために、自己紹介やキャンパス&大学周辺紹介の動画を交換しました。一番質問が多かったのは、菅原神社での参拝の仕方(や意味)で、一番反響が大きかったのは、キャンパス内の駐輪場(赤チャリ群)と周辺のお酒の自動販売機でした。意外なところに反応があるというのも新しい発見でした。
第3週目からは、日本とアメリカの短編をセットで3組読んでいきました。Padlet上で物語分析、質問、コメント、関連情報などを投稿し合いました。このプロジェクト(クラス)に参加したHoward Collegeの学生さんは文学に興味がある人ばかりで、中には将来作家になりたいという人もいたので、彼らの物語分析はとても深く、また、質問も鋭く、摂大生には大変刺激になるものでした。最初は向こうから来るコメントや質問の量に圧倒されました。スケジュールが密で迅速な反応が必要だったこと、語学ではなく内容重視のやりとりだったことから、4週目からはDeepL Translateなどの自動翻訳機の使用も許可しましたが、そこからぐんと議論が深まった気がします。どうしても最初から英語で書こうとすると時間がかかりすぎてしまい、表現や内容も限られてしまっていたのですが、自動翻訳機を使うとこちらからの問題提起やコメントも深くなり、より意味のあるやり取りができたようです。最終的に英語でのインプットやアウトプットも増えました。
「夕暮れの給食室と雨の中のプール」を読んでいたときには、丁度教育実習に行っていた4年生から中学校での「黙食」の給食風景写真が届けられ、最新情報を共有することができました。“cafeteria”と「給食」ということばのイメージの違いも興味深い議論となりました。「藪の中」の真犯人探し、「嵐」の奥さんの行動の倫理性、「大聖堂」の夫の変化など、様々な視点が展開しました。
最終課題では、日米混合の6グループに分かれ、紙芝居制作に取り組みました。各グループが6作品のうちの1つを担当したのですが、個別のやりとりにはPadlet以外にInstagramなどを利用してコミュニケーションを取りました。グループ内で取り上げるシーンを選び、絵を描き、原稿を作り、紙芝居風にストーリーを朗読し、それを動画にしてPadletにアップするというものでした。
事後アンケートでは、「このプロジェクトで一番楽しかったこと」として、「協働で紙芝居を作った事です。作業も楽しかったですが、向こうの学生と英語でやり取りする経験が新鮮で楽しく感じました。」「相手校の生徒さんとPadlet内で役割分担を決め、一つの紙芝居を完成させたこと」などが挙がり、最終課題での協働作業が高評価を得たようです。また、「このコラボレーションで学んだこと」としては、「文学作品を通して、英語は勿論、背景にあるものも学べたこと」、「異なる視点から見ることの大切さや、それを理解すること。相手の国(地域)の文化」「自分の考えや意見を持つ事の大切さを学びました。(中略)私には答えを出せない質問も多くあったので、日頃から何かしら疑問に対する自分の考えを頭の中で整理して過ごせたらいいなと感じました。」などの回答がありました。アメリカの大学生の分析力、批判的思考力に大いに感銘を受けたようでした。
国際学部では、今後も様々なCOILプロジェクトが試行されます。グローバルな協働作業を通して、新たな学びがあることを願っています。
<参考>
このプロジェクトで扱った6作品はこちらです。
民話
・“All God’s Chillen Had Wings” (*chillenはchildrenの意味)
・ “The Princess with the Magic Bowl” 「鉢かづき姫」*
近代小説
・”The Storm” (by Kate Chopin)「嵐」(ケイト・ショパン)
・“In a Grove” (by Ryunosuke Akutagawa)「藪の中」(芥川龍之介)
現代小説
・“Cathedral” (Raymond Carver)「大聖堂」(レイモンド・カーヴァー)
・“The Cafeteria in the Evening and the Pool in the Rain”(by Yoko Ogawa)
「夕暮れの給食室と雨の中のプール」(小川洋子)
*「鉢かづき姫」は河内の民話ということで、鉢かづきちゃんが寝屋川市のシンボルとなっていることもあり、是非アメリカの学生さんにも知ってもらいたいと思い、推薦しました。プロジェクトに先駆けて、「紙芝居」という伝統的な語りの方法の例を紹介するために、9月~10月にかけて、3年生が“The Princess Wearing a Bowl”の紙芝居と動画を制作しました。
期間限定で動画を公開中です:https://www.youtube.com/watch?v=OcO7y6ej0MQ
製作には“Learn Japanese Through Story-鉢かづき姫The Princess Wearing a Bowl” (https://www.youtube.com/watch?v=Zor4bbXfBLk)や「日本昔話―鉢かづき姫」(https://www.youtube.com/watch?v=m-lP64ITN0g)を参考にしました。
UPDATE 2023-02-24
2023年1月17日(火)に、2022年度「基礎ゼミナール成果発表会」が行われました。
国際学部1年生が受講する科目「基礎ゼミナール」では、1クラス10数名に分かれ、それぞれのクラスで様々なテーマを設定して学習します。本発表会は、その学習の内容や成果について共有して競い合うことを目的とし、2022年度は9クラス約150名が参加しました。発表会当日は、各クラスの代表者7名が学習の成果を発表し、その内容やプレゼンテーションの力を競いました。
国際学部教員の浦野崇央教授、橋本正俊教授、兪鳴蒙教授が審査を担当しました。審査の教員から発表内容に対する質問が出されると、発表者の学生は積極的に回答をし、他の学生は熱心に聴講するなど、緊張感のある充実した発表会となりました。
審査の結果、入賞者は下記の通りに決定しました。入賞の学生には、賞状と副賞が授与されます。
優勝 溝川実莉さん テーマ:「幸運が訪れるかもしれないクローバータクシー」
準優勝 長尾桃花さん テーマ:「たくさん食べる理由」
審査員賞
村田優月さん テーマ:「Coffee & Life」
福本萌さん テーマ:「ジェンダーレスの社会と市場の動向について」
森心那さん・味本奏人さん・安永暉さん・山口琉音さん テーマ:「大阪府の泉だこ」
発表は、それぞれのテーマに対して深い関心を持ち、文献調査やフィールドワーク等の実地調査を行なっているなど、高い水準の学習到達度を感じさせてくれるものでした。
(文:古矢篤史講師、写真:加来奈奈准教授、藤原崇講師)
UPDATE 2023-02-14
2022年12月3日(土)に、私たち外国語学部森ゼミナールのメンバーは京都府宇治市伊勢田町のウトロ地区を訪れました。ウトロ地区は、1940年から日本政府が推進した「京都飛行場建設」に集められた在日朝鮮人労働者たちの飯場跡に形成された集落で、住人の方々は劣悪な生活環境や差別の目に苦しみながらも助け合いながら生活してきました。
まず初めに、ウトロ地区平和祈念館で、金秀煥さん(平和祈念館副館長)からウトロ地区の歴史や現状、ウトロ地区で生きる人々の心境についてのお話を伺いました。ここでは、ウトロ地区では水道整備がなかなかされず、浸水被害が多いということ、それでも住人達は、共生こそが生きる道だと考え、「常識」にとらわれずに自分たちの権利を主張してきたことなどについて学習をしました。
続いて、平和祈念館の展示コーナーで、実際に展示パネルを見て、ウトロ地区の歩んだ歴史や、ウトロ地区で生きた人々の声に触れました。
その後、ウトロ地区全体を歩いて、2021年8月30日に発生した放火事件の跡地にも訪れました。この事件により住宅や空き家など7棟、祈念館で展示される予定だった資料50点が焼失しました。
最後に私たちが事前に送った質問に金副館長が答えて下さりました。憎悪感情を抱いたり、ヘイトクライムを唱える人たちとどのように付き合っていけば良いかという質問に対しては、「その個人に関わるよりも、そのような人々を生んだ社会に働きかける必要があると感じる。もし個人に関わる機会があれば、その人の意見をまずは受け入れることも大切だと考える」と答えられました。また、今後ウトロ地区を住民たちが力をもらえるような、楽しく賑やかな場所にしたいとのことでした。
実際にウトロ地区に足を運んでみると、インターネットで調べるよりも直接伝わってくるものが多くて、とても考えさせられる良い機会になりました。差別や偏見、ヘイトクライムのない世界にするために、また、マイノリティーの人々が幸せに生きられるように私たちにできることは何かを考えるきっかけともなりました。
(摂南大学 外国語学部 森ゼミナール アダムス小百合)
UPDATE 2023-02-03
摂南大学外国語学部森ゼミナールでは、2022年12月13日(火)に関西テレビクリエイティブ本部報道局報道センター記者の東和香奈(あずま・わかな)さんをお迎えしゲスト講義を開催しました。当日は東さんに摂南大学寝屋川キャンパス1049教室にお越しいただき、東さんの講義をじっくり聞き、その後にゼミ生6人によるインタビューを行いました。
ゼミでは日韓関係を研究テーマとしていますが、今回私たち森ゼミが東さんをお招きした理由は、在日コリアンの方が住むウトロ地区について東さんも強い関心を持って取材に行かれていたからです。インタビューでは「記者やメディアに関する話題」と「ヘイトクライムなどのマイノリティーに関する話題」の二つに関するお話をお伺いすることができました。
お話の中で特に印象的だったことは、メディアで取り上げられるニュース映像一つに膨大な時間がかかっているということ、そして記者という視点から物事と対峙した時に感じる葛藤についてです。東さんが担当されたウトロ地区に関するニュース映像は完成するまでに5ヶ月、ロール35本分を撮ったそうです。そしてニュースを作成する際には、見ている方にどのように自分のこととして捉えてもらうかという視聴者目線と、マジョリティ/マイノリティーの当事者からどう話を伺うかというインタビュアー目線の二つについて考えているとのことでした。またインタビューをしている際には「伝えたいことを伝えられているか」「取材が当事者にとって負担になっていないか」「自分は偽善者じゃないか」という葛藤を持っているとおっしゃっていました。自身の判断一つでニュースの見え方や受け取り方が変わるということはものすごく重いことであり、時に誰かの人生をも変えてしまうのだと感じました。
【東さんの話を聴くゼミ生の様子】
前述したように、東さんは「マイノリティー」に関する話題をいくつも取り上げニュースにしています。その中でも私たちの研究テーマ関連で、在日コリアンの方が住む京都市宇治市伊勢田町ウトロ地区についてのお話も伺いました。私たちもゼミのフィールドワークの一環としてウトロ地区を訪問しましたが、直接ウトロ地区に住んでいる方のお話を伺えたわけではないので、東さんから間接的に聞くことができてさらに理解が深まったように感じました。私自身はウトロ地区に対してヘイトクライムのような偏った考えは持っていませんでしたが、自分の目で直接見て、平和祈念館副館長の解説を聞き、さらに当事者の方にインタビューした方のお話を聴くことによって改めて「知る」ことの大切さを感じました。同時に無知への怖さも感じました。
インタビューでは、私たちが事前に用意していた質問にも快く答えてくださりました。そしてインタビューの中で東さんがおっしゃっていた「客観的な代弁者」になりたいという言葉に大変感銘を受けました。記者の方と交流し意見を聞くことが出来た貴重な経験でした。
【ゼミ生と東さんとの写真(前列左から二番目が東和香菜さん)】
(文:森ゼミ 神谷亜伶)
UPDATE 2022-07-25
2022年6月18日(土)、国際学部開設を記念して、シンポジウム「新時代を生き抜くための「グローバルリテラシー」」が開催されました。国際学部は、グローバル化する世界の中で、困難な課題を乗り越えていくための新たな「グローバルリテラシー」をもつ知的専門職業人の養成に取り組んでいます。今回のシンポジウムでは、そのモデルに相応しい二人の講師をお招きしました。
早稲田大学国際学術院国際教養学部教授の陳天璽(ちん・てんじ)氏には、「無国籍者から国際社会を問う」というタイトルで講演いただきました。陳天璽氏は「無国籍ネットワーク」代表理事として、実践的な活動も行っています。講演の冒頭ではまず、無国籍のイメージや国籍の概念について解説がありました。その上で、現代社会において、出生地主義や血統主義で国籍が与えられる各国の制度の結果や、移民や難民の状況などにより、無国籍者が生まれうる多様な状況を説明されました。そして、ご自身の経験やこれまでの活動を通して関わってきた国籍がないことで生じる様々な問題について紹介されました。さらに、小さな諸島で国籍に関係なく生きる人々についても示されました。これらの話を踏まえて、現在の国籍が過度に重視される社会に対して問題を提起されました。グローバル化する世界において、国籍の問題は必ず生じることであり、我々はそれを理解する必要があります。そのために教授が取り組んでおられる活動についても紹介され、特に最近の活動として「無国籍」という問題について子供たちに知ってもらうための絵本を作成した経緯についてもお話しされました。国民国家の限界があらわになり、グローバル化がますます進む中で、「無国籍」を特殊な一部の問題でなく、我々が生きる社会の一部としてとらえ、どのように良き社会を作るのか。講演を通して、強いメッセージが伝わってきました。
特別非営利活動法人パルシック理事の伊藤淳子(いとうじゅんこ)氏には、「モノが繋ぐ世界~「琥珀色の向こう側」に20年~」というタイトルで、東ティモールでの活動の背景やフェアトレードの具体的な取り組みについて、ご講演いただきました。東ティモールの主要な作物はコーヒーです。コーヒーに関わる問題は、世界のコーヒー消費国の上位に入る日本にも繋がる問題でもあります。「日本で飲む1杯のコーヒー代金のうち、たったの0.4%しか現地のコーヒー農家の収入にならない」という話は、かなりインパクトのある内容でした。そうした中で、生産する途上国と消費する先進国と間の持続可能な取り組みとして注目されるのが、フェアトレードです。伊藤氏は、20年間のパルシックの活動を通して、コーヒー生産者の協同組合を作ったことや、得たプレミアム(奨励金)により上水道の整備などを行った活動を紹介されました。しかしながら、20年の取り組みを通して、まだまだ消費国優位の状況は変わらず、コーヒー農園だけの収入では生活が困難なために若者が流出する問題があるなど、現状でも多くの課題があります。こうした中で、「生産者に変化を求め続けるだけでいいのか」という問いが投げかけられました。講演を通して、日常において飲むコーヒーは世界とつながっていることを実感し、最終的にモノを消費する立場にいる我々に何ができるのかを考えることにも繋がりました。
二人の講演を受けて、ディスカッサントである本学部の田中悟准教授は、「グローバルリテラシー」を考えるうえで重要なこととして、自分たちの知っている世界の向こう側を想像することや、さらに、グローバルな世界で生きぬくためには知らないものとの間に立ちはだかる「壁」をどのように穴をあけるかということをあげました。今回の2つの講演は、何を手がかりとして「向こう側」に思いをはせ、どのように「壁」に立ち向かっていくのかを知るためのケーススタディだったといえます。その後、田中准教授や参加者からの質問があり、それに対して、講演者の二人には、さらなる現在の問題、我々にできること、そして、未来への可能性など多くの視座を提示していただきました。グローバル化し、世界がますます繋がる現代社会において、我々がどのようにお互いを信頼しあいながら新しい世界を作るのか、お二方のご講演を通じて、そのために必要な「グローバルリテラシー」を考えるうえで重要な手がかりとなるヒントが示された、本学部にとっても意義深い内容のシンポジウムとなりました。
(国際学部准教授 加来奈奈)