Keywords: 韓国、朝鮮、ジャーナリズム、マス・コミュニケーション、市民社会、文化、トランスナショナル、東アジア
韓国の伝統衣装「韓服」を着てみました。着心地は、サラッとして軽いけれど温かいという印象です。
私は、ジャーナリズム・市民社会・文化などを手掛かりに、朝鮮半島の現在や日韓・日朝関係を研究しています。研究対象の範囲は少々広めです。
日本と朝鮮半島は、隣国として相互に深く関係する歴史をこれまで歩んできました。現在も日本の外交・安保・経済・文化交流など諸分野において、日韓・日朝関係は大きな位置を占めています。朝鮮半島の国際的な注目度は年々高まり、経済・文化分野における韓国の存在感はもちろんのこと、朝鮮民主主義人民共和国を取り巻く国際政治状況が東アジア情勢に与える影響も大きく、日本に暮らす私たちにとって目が離せない状況です。
このような状況は今後も続くでしょうから、朝鮮半島を分析・考察し理解する能力―「コリア・リテラシー(Korea Literacy)」とでも言いましょうか―は時代が求めるものであると言えます。韓国大衆文化への関心の高さや韓国語履修を希望する学生数の増加を考えると、「コリア・リテラシー」はこれからますます注目されていくのではないかと予想されます。
韓国ジャーナリズム研究
私の研究の原点は、社会が躍動的に展開している隣国への好奇心でした。今でこそ、K-POP・韓国ドラマなどの韓国のポップカルチャーや韓国メイクやファッションが日本に定着しつつありますが、私が関心を持ち始めた2000年代初めは、まだその黎明期でした。日本と似ているようで違う韓国、日本との複雑な歴史的経緯を持つ朝鮮半島を、ジャーナリズムやメディア、文化、市民社会を切り口に理解したかったのです。
とはいいつつも、学部生のときは演劇サークルに没頭していたため、恥ずかしながら本格的に研究を始めたのは大学院に進学してからです。修士論文で2000年代始めに世界的な注目を受けた『オーマイニュース(Oh my news)』(独立系インターネット新聞。市民記者制度を創始)を事例研究した結果、民主化運動(社会運動)とジャーナリズムの相関関係が韓国を理解する重要な要素だと気づきました。したがって、博士課程では、大韓民国樹立(1948年8月15日)以降のジャーナリズム史と民主化運動史はもちろんのこと、社会思想の展開を踏まえながら、現代韓国のジャーナリズムのあり方と市民社会を描くということをしました。韓国に留学して文献調査・現地調査(インタビュー調査、参与観察など)を進めながら、現地の人々とたくさん交流して感覚的・情緒的にも韓国社会を捉えようと努めました。
この成果は、博士論文としてまとめました。その後、博士論文をもとにして2019年に『韓国ジャーナリズムと言論民主化運動 ― 『ハンギョレ新聞』をめぐる歴史社会学』(日本経済評論社)を上梓しました。
ジャーナリズムには社会を変える力があります。平和を作り出し、ファシズムを止めるのにジャーナリズムは非常に重要な役割を果たしますし、その力は国境を越えて作用していきます。韓国でももちろん言論の力はとても大きく、それをめぐる人々の動きも大変活発です。ジャーナリズムと市民社会をめぐるダイナミズム(力学)を考えることは、韓国社会ひいては分断体制が持続している朝鮮半島を理解する上でも必須だと言えます。
〇2019年に上梓した『韓国ジャーナリズムと言論民主化運動 ― 『ハンギョレ新聞』をめぐる歴史社会学』については、以下の記事を参考にしていただければと思います(所属・職位は掲載当時)。
[インタビュー]「これからハンギョレは自ら世界のメディア史上の使命を探さねば」
https://japan.hani.co.kr/arti/politics/34929.html
韓国大衆文化とファンダム、トランスナショナル
近年、韓国大衆文化とファンダム(fandom、熱心なファンたちによってつくられる場や世界観)についても研究しています。韓国大衆文化といえば、2000年代初めから日本を席巻した「韓流」を思い出す人も多いでしょう。特に、ドラマ「冬のソナタ」の大人気は、「冬ソナ現象」と呼ばれ日本の文化に新風を巻き起こしました。その後、第二次韓流、第三次韓流というように数年ごとに音楽やドラマなどが流行しました。現在は、「韓流」という言葉の使用は低下傾向にあります。K-POPやK-ドラマは、今や単なるコンテンツを超えて一つの「スタイル」として日本に定着したと言っても過言ではないと思います。このような現象の意味を探りつつ、世界的なファンダムの広がりを考察しています。ファンダムは国民国家の枠に縛られるものではなくボーダレスに拡大していくため、トランスナショナルな(国境を越えた)関係というものが重要な視点になります。現在の国際関係を考える上では、このような越境的な現象の分析は欠かせません。
最近は、日本・中華圏のコンテンツのファンダムにも関心を持っています。将来的には、東アジアの文化力とファンダムにまで研究領域を広げていきたいと思っています。
なお、2021年度の私の担当ゼミ(文化演習Ⅰ・Ⅱ)では、K-POPとファンダムについて共同研究を行っています(詳しくは「ゼミ紹介」をご覧ください)。
〇本学部の第3回国際文化セミナー(2021年11月13日実施)で「K-pop、韓ドラの社会学 — Convergence Cultureから考える韓国現代文化—」というタイトルで発表しました。詳しくは次のURLをご覧ください。
「第3回国際文化セミナーを開催しました」
https://www.setsunan.ac.jp/news/detail.html?id=5387
〇私の教育研究業績の詳細についてはresearchmapをご覧ください。
https://researchmap.jp/read2020-1234
仁王山[イナンサン]から見たソウル市内の風景。昔は虎がよく出没していたとか…(今はいません)。ソウル市内には山が多く、休日に出かける人も多いです。韓国人は山登りが大好きです。
駐大阪韓国文化院でゼミ生と撮影(2022年5月)