ゼミを探検!

北條ゆかりゼミナール

マイノリティについて考える

【ゼミの概要】

 国籍、民族、宗教、セクシュアリティ等々において多様な背景をもつ人びとが社会をなす現代世界では、たとえ社会的に脆弱な立場にあるとは自覚しておらずとも、あるいは他者からはそのように見えずとも、誰もが「マイノリティ」の当事者でありうるという認識に立ち、差別のありようを知ることから学びの取組みを始めます。

 考察の対象とする地域は担当者の研究フィールドである「アメリカ」とは限りません。ここで言う「アメリカ」とは、OEDの第一義にあるとおり、西半球を占める陸塊全体(ラテンアメリカとアングロサクソンアメリカ)を指しています。無意識の「言語=国家」が種々の誤解を生んでいるこの日本語社会にあって世界への観察眼を曇らせる元凶、それが「アメリカ」という語にはあるということを指摘しておきたいと思います。

 このゼミで共有したい問題意識の中に多文化主義があります。これは、拡がる社会的多様性を前にして、単一の文化へと同化させようとする統合の原理に疑問を呈し、相互の承認と尊重に基づいて諸文化の共存をめざす立場です。ひとつの理念であると同時に歴史的現実の反映でもあり、これを問題の解決ではなく新たな課題の始まりであると捉え、個別・具体的な状況把握に努めます。その理解をもとに、国民国家を維持しつつも「超民族国家」による「ネオリベラリズムと真の意味で対決しうる新たなインターナショナリズム」(P・ブルデュー)の創出がいかにすれば可能となるのかといった議論へと進めていきましょう。

 もうひとつ、このゼミで学べることが「ジェンダーって何?」ということの理解です。女の解放が男並みになることには意味がない。競争の機会が男と女に均等に開かれているだけでは十分ではない。非婚化と少子化がそれを物語っています。人と人とが競争し敵対する社会を変えるには何が必要なのか。いつでもだれでも何歳からでもやりなおせる社会。働き方を選ぶことができ、そのことで差別的処遇を受けない社会。育児や介護が孤独な労働にならず、その選択が不利にならない社会。ひとりでも安心して子どもを産み育てられる社会。これらはひとつとして実現されていないからこそ、フェミニズムの役割は終わってなどいないのです。

【学びの方法】

 ゼミ生に共通する問題関心に基づき基本文献をいくつか提示します。それらを輪読し、基礎知識と共通認識を養います。論点を把握し、要旨をわかりやすく伝える試みを繰り返しながら、レジュメの作成に慣れていきます。疑問点を抽出しさらに深く調べ、自分の考えを練り文章化することで、徐々に批判的な読解と根拠のある立論ができるようになることをめざします。グループワークと発表を重ね、その結果、各自が卒業研究で取り組むテーマを設定した後は、先行研究を整理したうえで、自分なりの視点と執筆目的を明確に持ち、必要かつ的確な文献・資料を調査・収集します。ゼミでの発表機会を大切にし、互いに建設的な批判や示唆を与えあうことを重んじます。テーマによっては可能な限りフィールドワークや聞き取り調査を行います。

 ときに学外研修も行います。美術展、街並み探訪、京都の伝統工房で経験を積む国内外の工芸士訪問のほか、ゼミ生からもぜひ提案を寄せてください。

 仲間うちでわかり合っていることを前提とした「会話型」のコミュニケーションから、違いをそのまま受け入れ、わかり合っていないことを前提とした「対話型」への転換を図りましょう。そのためには他者の意見に傾聴する態度と自分の考えを持ち説明しようとする姿勢が大切になります。その糸口として、地球規模の課題に何がありどのように実践されているのか、現代世界のなかに日本を客観的に位置づけると何が足りないのか、そうしたことを気づかせてくれる書物に親しみ、考えを文字にしてください。その成果をゼミの仲間同士で分かち合い議論を重ねることが、きっと自信につながることでしょう。

【卒業研究テーマの例】

 「日系南米人児童の教育問題-母語教育の重要性-」

 「ネパールにおける貧困と教育の格差-必要とされている支援とは-」

 「日本社会における「LGBT」に対する差別と法的対応」

「「観光立国」日本への道-地方における観光客誘致の試み-」

「日本女子サッカーの現状と展望-当事者として検証する-」

「米国における黒人差別-黒人女性による新しい抗議運動-」

「全ての女性にリプロダクティブ・ヘルス/ライツを-私たちにできること-」

「幼児向けテレビアニメ『HUGっとプリキュア!』に込められたメッセージ-ジェンダー視点からの分析-」

「アステカの人身供犠-なぜ「花・戦争」と呼んだのか-」

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